写真によるヘール・ボップ彗星軌道図作成実習

H11.7.30

札幌旭丘高等学校 杉山剛英

[要約]1997年のヘール・ボップ彗星を3/20〜5/2に渡って11回撮影したものをアルバムに貼り、生徒一人一人がじっくり天体観測をできる状態を実現した。この生きた教材を使い、彗星軌道図を作成し彗星の尾と太陽の位置関係,降交点の確認と太陽系軌道面,朝と夕方の見え方の違いから地球の丸さを感じ取る実習を開発実践した。前代未聞の写真天体観測に生徒は天体に大きな関心を示し、理論と現実の一致に大きな感動を得ていた。

1.はじめに

生徒の天文に対する興味は大きいものがあるが、見かけの運動と実際の運動との関係がよくつかめない生徒が多く、難しいというイメージを持っている。しかし、それは天体観測を疑似体験させ、太陽を中心に天体の動きを教えることによっておおむね解決する。今回は1997年春に来訪したヘール・ボップ彗星を題材に、天体観測疑似体験を筆者が撮影した写真を使って行い、彗星の尾と太陽の位置関係,彗星の見え方と地球の丸さの関係,そして彗星そのもののすばらしさを体験考察できる教材を開発実践したので報告する。

2.撮影方法

1997年3月20日〜5月2日の期間で11回の撮影を行った。撮影場所は札幌市郊外の当別町を中心としている。撮影カメラはオリンパスOM-1{50mm標準レンズ固定撮影,F=1.8},フィルムはISO400〜800,露出30〜50秒である。肉眼で見た彗星は写真以上のものであった。

3.教材作成方法

11枚の写真をそれぞれ41枚焼き増しし、順にアルバムに貼り41組作る。ワープロで3月20日頃の地球,ステラナビゲーターでHB彗星と太陽系の軌道図と星図{4月10日の15時頃の西空}を作成する。実際は太陽も星座の中を移動しているが、前後20日程なので無視してもさほど影響はない。

4.実習方法
実習1 彗星軌道図に尾を書き入れる
太陽との位置関係からイオンガスの尾とちりの尾を作図させる。この時、太陽から離れていくと尾の間隔が広がることに気づかせる

写真に写っている星と星図を見比べて彗星の移動経路を作図させる。この時、OHPを使って見つけるポイントを指示する。太陽系の惑星軌道面も書かせ、5月1日に降交点を通過していることを確認する。実習1で作図したものと見比べ、ほぼ同じであることを認識させる。この時、夕方の空は太陽系を斜めに見ているという意識を持たせる。パソコンで合成した画像をOHPで投影し、太陽と尾の位置関係が理論通りであることを示す。


実習3 朝と夕とでの見え方の違い

3月20日頃には彗星は朝と夕に見えているが、尾の方向が約90度違って見える。これは地球が丸く、春分の日付近で札幌が北緯43度にあることに原因がある。このことを作図して考えさせる。発泡スチロール球で作った地球と札幌を示したモデルをOHPの太陽光にかざして回し、実感する。

5.感想
尾の角度がどんどん変化して広がっていくのがすごかった。写真に写っているすごい数の星から星図の星を見つけ出すのは本当に大変だった。この目で見たかった。こんな大彗星を写真やプリントで知ることが出来て良かった。当たり前だけど星図と写真の星座が一致していた。

6.まとめ

生徒にとっては全く初めての実習であったが、おおむね位置関係について理解し、彗星の美しさにも惚れ惚れとしていた。移動図を作るのは難しいようであったが、地道な作業とトンボーの写真探査の苦労とを重ね合わせたり、理論と写真とが一致したときの驚きは得がたい経験であった。

7.文献

ステラナビゲーターforWin95{アストロアーツ社}
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