濃硝酸と食塩で金を溶かす

H9.5.5

札幌旭丘高等学校 杉山剛英
原理
王水は金を溶かすものとして有名ですが、理科の先生でも実際に王水で金を溶かした経験のある方は少ないと思います。王水は以下の反応で生じる塩素と塩化ニトロシルの働きで金を溶かします。溶けた金は黄色の塩化金酸イオン{[AuCl4]−}となります。Au(V)という事です。1:3にはあまりこだわらなくても大丈夫です。
HNO3 + 3HCl → Cl2 + NOCl + 2H2O
指導
ここでNOClのNO+は硝酸から、Cl−は塩酸から来ているという事を生徒に気付かせます。H+は濃硝酸に十分あるので、Cl−があれば塩酸でなくても良いのではないかと発問し、食塩という答えを誘導します。
濃塩酸の蒸気は相当強烈ですから、今まではなかなか生徒実験はさせられなかったと思います。{篠路高校にいた時はやらせてましたが}。濃硝酸の蒸気はさほどでもありませんから、安全性にも秀でた方法だと思います。この方法は以前から知られていたものだそうですが、私はその文献を見たことがありません。ご存じの方はお知らせ下さい。

方法

生徒に金が溶けたら何色になるか予想させます。
50mlの三角フラスコに金箔{1.5cm角位,ピンセットで適当にむしる}を入れ各班に 渡します。ビーカーを使う と、鼻息で飛ばす生徒が出ます。
濃硝酸3ml入りの試験管を渡します。手についてもすぐ洗えば大丈夫。
濃硝酸を三角フラスコにすべて入れます。もちろん何の変化もありません。
食塩を小さじ1杯加え、ゆっくり穏やかに振ります。
金箔の一部が茶色くなり、溶けていきます。

OPTION

この王水のフラスコに5mm位に切った銅線を入れ、いかに強力なものかを観察させます{狂ったように溶けていく}。赤褐色のNO2の発生が確認できたら、水で薄めて反応を止めます。NO2は有害なガスなので十分注意させて下さい。
このNO2が水に溶けると硝酸になります。車の排気ガスに含まれていますので、汗に溶け込めばかなり薄いですが王水と似た事になり、腐食しないと思われてきた金の宝飾品も長い年月のうちには溶かされて金属アレルギーを引き起こすと思われます。数年前に純金がヨウ素水溶液に溶ける事が報告されています。金は1g1300円位です。
食塩のほかにも、塩化アンモニウム等でも出来ます。また硝酸ナトリウムと濃塩酸でもできます。

金箔について

札幌では大丸藤井3F書道コーナー{南1条西3丁目}で買いました。10cm角のが10枚で2800円{時価}。銀箔が100枚で3500円{電池の実験に使えます}。アルミ箔{多分高純度}もありました。大体金箔1枚で30班分は出来ます。1班10円位です。本校の生徒も喜んでやっていました。ぜひやってみて下さい。生徒は何てすごい学校だろうと感心します。
写真
金が溶けて黄色い溶液になっている
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